所得控除は、所得税を計算する際に「それぞれの生活事情(家族構成や病気、災害など)」に合わせて所得から差し引いてくれる、いわば**「税金の割引枠」**です。
15種類の控除を、**「物的控除(支出に関するもの)」と「人的控除(人に関するもの)」**に分けて整理します。
1. 物的控除(7種類):何かを支払った時の控除
支出した金額やその内容に応じて受けられる控除です。
| 控除名 | 内容・ポイント | 控除額の目安 |
| 雑損控除 | 災害、盗難、横領による損害。 | 一定の計算式(資産の10%超など) |
| 医療費控除 | 自分や家族のために払った医療費。 | (支払額-保険金)-10万円 (上限200万) |
| 社会保険料控除 | 健康保険、厚生年金、iDeCo(※)など。 | 支払った全額 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | iDeCoの掛金など。 | 支払った全額 |
| 生命保険料控除 | 一般・個人年金・介護医療の3枠。 | 最大12万円(所得税) |
| 地震保険料控除 | 地震保険の掛金。 | 最大5万円(所得税) |
| 寄附金控除 | ふるさと納税、国への寄附など。 | (寄附額-2,000円) ※所得の40%が上限 |
※ セルフメディケーション税制:医療費控除の特例。特定のドラッグストア薬購入が年間1.2万円超で適用(医療費控除と選択適用)。
2. 人的控除(8種類):家族や本人の状況による控除
「誰を養っているか」「本人がどんな状況か」で決まる固定額の控除です。
| 控除名 | 対象・条件 | 控除額(所得税) |
| 寡婦控除 | 夫と死別・離婚した一定の女性。 | 27万円 |
| ひとり親控除 | 未婚を含む、生計を共にする子がいる親。 | 35万円 |
| 勤労学生控除 | 働きながら学ぶ学生(所得制限あり)。 | 27万円 |
| 障害者控除 | 本人、配偶者、扶養家族が障害者の場合。 | 27万 / 40万 / 75万 |
| 配偶者控除 | 所得48万以下の配偶者がいる場合。 | 最大38万円 (本人の所得制限あり) |
| 配偶者特別控除 | 配偶者の所得が48万超〜133万以下。 | 38万〜1万(段階的に減少) |
| 扶養控除 | 16歳以上の親族を養っている場合。 | 38万 / 48万 / 58万 / 63万 |
| 基礎控除 | 納税者全員(合計所得2,400万以下)。 | 48万円 |
3. 渋沢栄一的「控除」の見方:算盤の慈悲
渋沢栄一は「富の分配は公平でなければならない」と考えました。この15種類の控除は、一見複雑ですが、**「弱きを助け、個別の事情を汲み取る」**という国家の道徳(論語)が算盤(税制)に組み込まれた姿です。
- 基礎控除は、人間が生きていくための「最低限の生活費」。
- 医療費控除は、病気という「予期せぬ不運」への配慮。
- 社会保険料控除が全額引けるのは、将来への備えを国が「奨励」しているからです。
これらを「単なる記号」として覚えるのではなく、「なぜこの控除があるのか」という背景を理解することで、FPの知識は生きた知恵になります。
4.間違いやすいポイント
- 扶養控除の年齢: 16歳未満の子どもは「児童手当」があるため、扶養控除の対象外(0円)。
- 配偶者控除の年収: 「103万円」は給与収入の場合。所得に直すと「48万円」。
- 社会保険料控除: 生計を一にする「家族の分」を払った場合も、自分の控除にできる。
- 火災保険: 地震保険料控除はありますが、火災保険単体では控除されません。
扶養控除の金額は、年齢や同居の有無によって4つの金額に分かれており、FP3級試験でも実務でも「もっとも混乱しやすい箇所」の一つです。
Googleドキュメントに貼り付けられるよう、**「なぜその金額なのか」の理由(ストーリー)**を添えた年齢早見表を作成しました。
参考:扶養控除の年齢別・金額早見表
扶養控除の判定は、その年の**「12月31日時点」**の年齢で行います。
| 区分 | 年齢(12/31時点) | 控除額(所得税) | 覚え方のポイント・理由 |
| (対象外) | 16歳未満 | 0円 | 中学生以下。児童手当があるため、控除はなし。 |
| 一般の扶養親族 | 16歳 〜 18歳 | 38万円 | 高校生など。ここから扶養控除がスタート。 |
| 特定扶養親族 | 19歳 〜 22歳 | 63万円 | 大学生の時期。学費がかかるので**「最高額」**。 |
| 一般の扶養親族 | 23歳 〜 69歳 | 38万円 | 大学卒業後や親など。基本の金額に戻る。 |
| 老人扶養親族 | 70歳以上 | 48万円 | おじいちゃん、おばあちゃん世代。 |
| (同居老親等) | 70歳以上(同居) | 58万円 | 同居している親。介護等の負担を考慮し10万加算。 |
1. 渋沢栄一的「数字の裏にある事情」
渋沢栄一は、数字(算盤)の裏にある「人の営み」を大切にしました。この金額の差は、まさに人生のステージごとの「家計の苦しさ」を国が算盤で弾いた結果です。
- 63万円(大学生): 渋沢が多くの学校を支援したように、教育には金がかかります。だからこそ、国はここを一番手厚く(63万)設定しています。
- 58万円(同居の親): 家族が共に住み、敬う(論語の精神)ことを支えるための加算です。
2. 【暗記用】一発で覚える「数字の階段」
試験直前は、以下の**「38」**を基準にした階段で覚えるのがコツです。
- 基本は「38(さんぱち)」:高校生も、卒業後の子も、70歳未満の親も。
- 大学生は「黄金の63(むざん)」:学費が「無残(63)」にかかると覚える。
- お年寄りは「幸せの48(しあわせ)」:70歳を超えたら「しあわせ(48)」。
- 同居なら「プラス10」:老人(48)と一緒に住むなら「58(ごっぱち)」。
3. 注意すべき「落とし穴」
- 16歳未満は0円: 子どもが2人(10歳と17歳)いる場合、控除できるのは17歳の分(38万)だけです。
- 所得制限: 扶養される本人の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)である必要があります。
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