損益通算(そんえきつうさん)は、「もっとも強力な節税テクニック」の一つです。
一言でいうと、**「あるビジネスで出た赤字を、他のビジネスの黒字から引き算して、全体の税金を安くすること」**です。
1. 損益通算ができる所得は4つだけ!
10種類ある所得のうち、赤字を他の所得とぶつけられるのは**「不・事・山・譲」**の4つだけです。これ以外(例えば副業の雑所得など)で赤字が出ても、他の所得から引くことはできません。
| 略称 | 所得の種類 | 覚え方のコツ |
| 不 | 不動産所得 | 大家さんの家賃収入の赤字。 |
| 事 | 事業所得 | 本業の商売で出た赤字。 |
| 山 | 山林所得 | 山の伐採・譲渡で出た赤字。 |
| 譲 | 譲渡所得 | 資産を売って損が出た場合。 |
合言葉は「富士山の上(ふじさんじょう)」
試験ではこの4つを言えるかどうかが生死を分けます。
2. 損益通算の「禁止ルール」に注意!
「富士山の上」であっても、何でも引いていいわけではありません。FP3級でよく狙われる**「引けない赤字」**があります。
- 不動産所得の赤字のうち「土地」の取得に要した借入金の利子
- 建物分の利子は引けますが、土地分の利子は「損益通算」の対象外です。
- 生活に通常必要でない資産の譲渡損失
- ヨット、別荘、競走馬、1個30万円超の貴金属などの売却損は、他の所得から引けません。
- 株式等の譲渡所得の赤字
- 原則として、株の赤字は「株の利益(配当含む)」としか相殺できず、給与所得などとは切り離されています(分離課税のため)。
3. 損益通算の計算順序(2段階ステップ)
計算には決まった順番があります。パズルのように組み合わせていきます。
- 第1次通算:
- 「不動産・事業」の赤字を、まず「給与・雑」などのグループ(総合課税の他所得)と合算。
- 第2次通算:
- それでも引ききれない赤字がある場合、「譲渡・一時」の所得から差し引く。
- 第3次通算:
- 山林所得や退職所得がある場合、そこからさらに差し引く。
4. 渋沢栄一的「失敗の活かし方」
渋沢栄一は「逆境の中にも、次なる成功の種がある」と考えました。
損益通算という制度は、まさに経済活動における「失敗(赤字)」を、社会全体(納税システム)として「次への投資」として認めてくれる仕組みです。
新しい事業(事業所得)に挑戦して赤字が出たとしても、それを本業(給与所得)の税金と相殺することで、挑戦のコストを抑えることができます。
算盤の知恵:
「赤字=損」とだけ捉えるのではなく、損益通算を活用して**「税務上の還付金」という形でキャッシュを回収する**こと。これが渋沢が重んじた、逆境における「知恵」の出しどころです。
5. まとめ
- 損益通算できるのは: 不動産、事業、山林、譲渡(土地建物以外)。
- できないのは: 雑所得(副業)、利子所得など。
- 特殊ルール: 土地取得の借入金利子は、不動産所得の赤字計算には含められるが、損益通算(他所得との相殺)には使えない。
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